メルカリ研究・ユーザー体験レポート

1.はじめに

株式会社メルカリは、2013年に株式会社コウゾウとして設立され、同7月にフリマアプリ「メルカリ」を配信。出品数は2013年に1万点以上、2015年に10万点以上、2018年には累計出品数が10億点、累計流通額が1兆円を超え、利用者数は月間1,100万人を超えた。
2018年5月に上場するまでは、日本唯一の「ユニコーン企業」と呼ばれており、現在は売上135億(2018年6月決算)、時価総額4,430億円(2019年8月1日時点)を超える成長企業である。

2.フリマアプリ「メルカリ」の特徴

メルカリの特徴は、「シェアリング・エコノミー」を体現するサービスであるということである。シェアリング・エコノミーとは、インターネット上のプラットフォーム(アプリ、WEBなど)を介して、個人同士が所有する遊休資産(スキルなど無形資産も含む)を他者と共有・提供するような経済活動であり、以下の特徴がある。

1. シェアできるものを有するユーザーと、それを利用したいユーザーで成り立つ
2. P2P(提供者と利用者同等な立場同士)によるやりとりである
3. 取引はインターネット上のプラットフォームで行われる
4. サービスの提供はオンラインの場合もオフラインの場合もある
5. 提供者がプロであるかそうでないかの境目があいまいである
6. Facebookなど実名制SNSと連携することなどによる信用をもとにして成り立っている

シェアリング・エコノミーにおいては「メルカリ(物)」以外にも、「Airbnb(宿泊)」「Uber(車)」など、多くの成長企業がサービスを展開している。

3.メルカリのユーザビリティについて

月間利用者が1,100万人を超え、累計10億点が出品されているメルカリは、「出品者」「購入者」両者に対して、利用のハードルを下げるためのユーザビリティにおいての様々な工夫が施されている。特に、価値の源泉となる出品に対しては、普段、商品を販売する側に回ることが少ない一般消費者に対して、いかに簡単に出品をさせるかに力を入れていると感じた。

出品者には、「出品」「売買」「発送」の3つのハードルが存在するが、メルカリは、この3つの要素のハードルを下げるためのユーザビリティを追及している。

3-1. 出品に対するハードルを下げる工夫


上左図のように、メルカリでは「商品写真」「カテゴリ」「商品の状態」「商品名」「説明」の5つを記入すれば、誰でも簡単に出品をすることが出来る。この入力項目の少なさによるハードルの低さが、累計10億点の出品数を実現させている。
また、上右図のように、写真を選択すると写真がAIにより分析され、カテゴリやブランド、商品名については自動的に予想入力がされるようになっている(精度については未だ改善の余地がある)。また、説明文についてもテンプレートが用意されており、文章が思いつかないユーザーは、テンプレートを参考に説明文を作成できるようになっている。
実際に出品をするにあたっては、撮影、文章作成、各種設定を含めて30分程度で出品することが出来た。

3-2.売買のユーザビリティ・システムについて

CtoC(個人間商取引)においては、利用者同士のプライバシーの保護、トラブルの防止が重要である。メルカリでは、ユーザー登録時にメルカリに本名・住所・電話番号などを登録する必要があるが、これはユーザー間では閲覧することが出来ないため、ユーザーは他のユーザーに名前や住所、電話番号などを知らせることなく取引を行うことが出来る。

お互いに顔が見えない状態で商取引を行う為、売主としては「本当に代金を支払ってもらえるか」、買主としては「本当に商品が届くかどうか」が不安になる。これを解消するために、メルカリではエスクロー形式での決済方法を採用している。

エスクロー形式では、メルカリが一時的に買主から料金を受領し、メルカリの受領確認後に売主が商品を買主に発送し、買主のもとに商品が届いた時点で、買主が受取通知を行い、そこで初めて売主に料金が支払われる仕組みになっている。売主と買主の間にメルカリが入ることで、安心して売買取引を行うことが出来るようになっている。

3-3.発送のユーザビリティ

個人的には、発送に対するハードルが一番高く感じたが、これに対しても様々な工夫がなされていた。コンビニで専用の資材が65円で販売されているため、購入した資材に商品を梱包し、レジに持っていけば簡単に配送することが出来る。

らくらくメルカリ便(匿名配送)では、取引時にメルカリから発行されたバーコードをレジのスタッフに提示すると、相手先の住所が分からなくても品物を発送することが出来た。コンビニのスタッフもオペレーションに慣れているようで、非常にスムーズに行うことが出来た。

配送料は全国一律380円で、販売額から自動的に差し引かれるシステムになっていた。

4.実際に売り手として商品を販売してみて

この章では、実際にメルカリで商品を販売してみた所感について述べる。今回のレポートにあたり、10年以上前に購入したカシオのデジカメ「EXLIM EX-Z2000」を売ることにした。

販売する商品については
「電化製品など商品のスペックが明確なものにする」
「ブランド品など真贋の確認ができないものは避ける」
「商品のサイズが小さく、配送が容易なものにする」
を条件に選定した。

メルカリでは、各ユーザーに対して取引数や評価が表示されるようになっている。今回初めてメルカリで出品するにあたっては、実績、信用がない状態から購入してもらうことになるため、電化製品など、誰から見ても製品の性能が分かる商品の方が、買われやすくなるのではないかと予想した。ブランド品については出品者の信頼度が大きく影響するため、今回は見送った。また発送の手間を考えサイズが小さく送りやすいものにした。実際は配送料380円、梱包資材費65円で送ることが出来た。

値付けについては、すでにメルカリで売買が成立している同型の製品の価格を参考にした。

上図のように、メルカリ内で製品の型番で検索したところ、およそ1,500円から5,000円の間で売買がされているようだった。ほかの出品者の出品内容を確認したところ、比較的高額の価格設定をしているものは、カメラケースを付属させていたり、箱や説明書などの保存状態が良いものが多かった。私の商品は、箱や付属品が揃っていない状態であるので、やや安めの価格設定にした。こういった値付けのゲーム性も、ユーザーがメルカリを楽しむ要素になっていると感じた。最終的に価格は2,500円に設定することにした。




写真については、明るい背景での写真が多かったので、より目を引くために、木目調の背景で撮影し(左上図)、付属品を含めたすべての商品を撮影し、購入後のトラブルがないように心がけた。また、出品にあたり動作確認は行っていたが、配送時の衝撃により不具合が生じた場合のトラブル防止のため、動作確認の動画も念のため撮影しておいた。
現在のメルカリでは、動画でのアップロードには対応していないようであったが、今後は動画のアップロードにも対応していくことが予想される。

出品から4時間ほどで商品が購入され、メルカリの商取引の活発さを実感した。

5.取引後について

購入者に製品が届いたのち、販売額の2,500円からメルカリの販売手数料10%(250円)と、配送料380円が差し引かれた1,870円が売上高として登録されたことが管理画面で確認できた。

しかし、この状態のままでは、1,870円はメルカリ内の購入でしか使用することが出来ない。メルカリ以外でこのお金を使うためには、別途自分の銀行口座を登録し、メルカリに振り込み依頼をする必要がある。さらにその場合、別途200円の手数料が発生する。
この仕組みにより、メルカリ内に売上を留まらせ、自身が商品を販売した売上で、今度は自分が買手に回るという循環が発生していると思われる。

メルカリは現在、キャッシュレス決済サービスのメルペイの普及を進めているが、メルカリで積極的に売買を行うユーザーにとっては、メルペイで自分の資産を保持する選択をする可能性が高い。

上記のシステムにより、メルカリとメルペイの相乗効果が生まれている。

5.まとめ

メルカリは「インターネット・スマートフォンの普及」「物が余りの時代」「副業への意識向上」などの、社会的な動向とマッチし、創業わずか6年で売上135億、時価総額4,430億円という爆発的な成長を遂げた。また、ユーザビリティの徹底や、システム面の整備により、競合との差を広げている。

一方、「現金出品問題」「領収書出品問題」など、社会的な問題として取り上げられることが多いが、これはUberやAirbnb、Limeなど、過去の成長企業においても常に同様の状況に直面しているため、社会的なインパクトを与える企業には避けられない問題である。今後、既存業界や行政などとの折り合いをつけていくことが必要である。

また、2019年10月の消費税増税にむけて、消費税がかからない個人間取引に注目が集まる可能性もあり、今後さらにユーザー拡大すると思われる。

現在メルカリは10代~30代の女性の利用者が多いが、今後はより遊休資産を多く保有している30代以降の男性や、高齢者の利用者を増やすことが、さらなる事業拡大のためには必要になるが、これについても鹿島アントラーズの経営権を保有するなど、さらなる認知度の向上と、ユーザー層の拡大を実践しているので、今後も成長は続くと思われる。

役に立った 0

役に立ったボタン設置してみました。是非押していってくださいm(__)m(2020年4月設置)

この記事を書いた人

mako110

原宿でWEBディレクターをやっています。
WEB業界に携わって約15年。独立して7年目です。
自分らしく、働きやすく、周りの人の役に立つ。
そんな仕事をゆるゆるとやっています。