シェアハウス業界に関する考察

シェアハウスとは、キッチンやリビング、浴室、トイレなどを共有(シェア)しつつ、各住民の個室がプライベート空間となっている共同生活のスタイルをもつ居住空間のことである。個人間で共同生活をおこなうルームシェアとは異なり、管理・運営を行う事業者が存在している。近年の若年層の貧困化と、ライフスタイルの多様化によって、シェアハウスに対する需要は増加傾向である。シェア住居専門メディア「ひつじ不動産」によれば、シェアハウスの数は、2005年に2000戸、2013年に1万8000戸以上にまで増加しており、現在では都内中心に約2000件、20000戸のシェアハウス物件が存在している。

一時の貧困層が生活費を節約するための共同生活の場としてのシェアハウスだけではなく、近年では女性が安心して生活するための女性専用シェアハウス、同じ趣味や目的を持った者が生活を共にするコンセプトシェアハウスなど、シェアハウス自体も多様化しており、また利用者も、外国人利用者や、セカンドハウスとして使用する者、短期滞在のために使用する者など、こちらも多様化している。

また、貸主としても、水回りなどの設備負担が少なく、また、戸数が増えることによる収益の安定化、面積当たりの収益効率の増加などのメリットが多く、空室率が20%を超え、飽和状態にある賃貸住宅物件の改善案として、既存の物件をシェアハウス用にリフォームを行うオーナーも増えてきている。

シェアハウス居住者の平均居住期間は、「1年~2年未満」が 45.1%と最も高く、次いで「6 ヶ月~1 年未満」が 23.1%となっている。また、15.4%が半年以内で退去をしていることから、物件の回転率が非常に高いことが分かる。

上記のように活発になりつつあるシェアハウス市場であるが、シェアハウス事業においての課題は多い。20%以上のシェアハウス運営事業者が「入居者を募集する手段やノウハウが不足している」と感じている。多くの事業者は、既存のシェアハウス募集ポータルサイトに広告費を支払い、掲載を行っている。だが、ほとんどのポータルサイトは入居希望者から運営者に問い合わせが来た時点で課金が発生する仕組みになっており、仮に入居が決まらなくてもサイト運営者に費用を支払わなければいけない。

一方、入居希望者からしても、シェアハウスを探すための手段が充実しているとは言えない。シェア住居、あるいはルームシェア用の物件を探す際に最も活用した媒体は、「インターネットの紹介サイト」が 35.8%、「一般の不動産会社」が 24.9%、「クチコミ(知人の紹介等)」が 22.9%の順となっている。しかしながら、シェアハウスを紹介したインターネットの紹介サイト(ポータルサイト)についても、情報が豊富とは言えず、一般の不動産会社も、シェアハウスの仲介は積極的には行っていない現状がある。

・物件戸数、利用希望者共に増加傾向
・物件の回転率が高い
・入居者募集の方法、ノウハウが不足している

上記の状況から、これらを解決するための事業を展開することは、日本の住環境を改善する意義があると考える。
また昨今では「かぼちゃの馬車」と呼ばれる、シェアハウスでのサブリース問題も社会的な注目を浴びている。

シェアハウス専門の物件情報サイト「ひつじ不動産」を運営する株式会社ひつじインキュベーション・スクエア(東京都渋谷区)が2017年3月に発表した市場動向調査では、同社の累計問い合わせ件数が2013年の125,000件から16年末時点で216,000と3年間で倍近く増えている。特に20代後半から30代の女性の問い合わせが多く、「狭いワンルームマンションが嫌になった」「異なる職業の人と話してみたい」などが主な検討理由となっている。この流れはまだまだ加速していくと考えられる。低所得者の受け皿としてのシェアハウスから、女性が安心して暮らせる女性だけの住居コミュニティ、海外からの留学生、転居者などの不便を解消する役割などを経て、今後は首都圏在住者のセカンドハウスとしての立ち位置や、よりコンセプトに特化した形態なども増え、シェアハウス市場はしばらく活性化していくものと考えられる。

参考資料

貸しルームにおける入居実態等に関する調査

シェアハウス等における契約実態等に関する調査

民間賃貸住宅における共同居住形態に係る実態調査

賃貸住宅における新たな価値提案

都道府県別「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数・空き戸・空き室率」

シェアハウスの入居問い合わせ数20万件突破ー20代後半から30代の女性の住まいの選択肢として定着ー

国土交通省「寄宿舎」規制緩和

「シェア経済」拡大へ規制緩和を 国交省で初会合

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この記事を書いた人

mako110

原宿でWEBディレクターをやっています。
WEB業界に携わって約15年。独立して7年目です。
自分らしく、働きやすく、周りの人の役に立つ。
そんな仕事をゆるゆるとやっています。